30代エンジニアで「仕事は回っているのに年収が伸びない」「評価は悪くないのに昇給が小さい」と感じる人は少なくありません。原因は能力不足というより、“頑張り方の方向”がズレているケースが多いからです。特に30代は、技術の幅が広がる一方で責任も増え、学習・発信・交渉・転職準備など「年収に直結する行動」が後回しになりがちです。
一方で、AIとDXの波により、企業が評価するポイントは急速に変わっています。いま年収を伸ばしている人は、必ずしも最強のコーディング力だけで勝っているわけではありません。「捨てるべきものを捨てて、伸ばすべき価値に集中した人」が強い状況です。
この記事では、30代エンジニアが年収を上げるために“捨てるべき3つ”を具体化し、捨てたあとに何へ投資すれば市場価値が上がるのか、転職・交渉・副業まで一気通貫で整理します。読み終わる頃には、明日からの行動が具体的に決まるはずです。
30代エンジニアの年収が伸びにくい背景を知る
まず現実を数字で押さえます。dodaの平均年収データでは、IT系の平均年収や年代別の傾向が示されており、30代は伸び代がある一方で「伸びない層」も一定数いることが読み取れます。[出典:doda 平均年収データ 2024/2025]
ここで重要なのは「30代は伸びる余地があるのに、伸びない人も多い」という点です。背景には、スキル要件の変化スピードがあります。世界経済フォーラムの『Future of Jobs Report 2025』では、今後のスキル需要の変化が前提となり、学び直しと職務の再定義が求められることが示されています。[出典:WEF Future of Jobs 2025]
さらにIMFは、AIが雇用や業務タスクに広範な影響を与え得るとし、国や職種によって“影響の受け方”が異なる点を整理しています。[出典:IMF 2024]
要するに、30代で年収が伸びないのは「努力不足」ではなく、“努力の投下先が古い”ことが多いのです。例えば、Webアプリの保守運用を8年続けているAさん(32歳)。障害対応も早く、社内評価も高いのに年収は横ばい。理由はシンプルで、会社が評価するのは「その職務の市場価格」だからです。市場価格が上がらない領域にフルコミットしている限り、評価されても昇給幅は限定的になります。
この章のKPIは3つです。
- 「自分の職務の市場価格」を把握する:求人票を一定数見て、年収レンジ(下限・中央値・上限)をメモする(週1回)
- “変化しているスキル”に触れる:AI/クラウド/セキュリティ/データのどれか1つで学習時間を週2時間確保する
- 成果の翻訳力を鍛える:直近3カ月の成果を「売上・コスト・リスク低減・工数削減」に変換して箇条書き10個作る
年収を上げるために捨てるべき3つ
結論からいきます。30代エンジニアが年収を上げるには「捨てる」が近道です。なぜなら、時間は増やせない一方で、求められるスキル領域は拡大しているからです。AI活用の広がりや採用トレンドの変化もあり、評価される“価値の作り方”が変わっています。[出典:LinkedIn 各種レポート]
捨てるべき1:コーディング量=評価という思い込み
年収が上がるほど、評価は「コードを書く量」から「価値を生む設計・意思決定」に寄ります。もちろん実装力は重要ですが、30代以降は“実装だけで評価の天井が来る”ケースが多いのが現実です。職種別の年収傾向でも、上流・横断領域(PM、セキュリティ、データなど)が高くなりやすい構造が見られます。[出典:doda 平均年収データ 2024/2025]
エピソード:Bさん(35歳)は、実装が速い“職人”でしたが、年収が伸びずに悩みました。転機は「機能を作る」から「何を作るべきか」を主導する立場に寄せたこと。要件の曖昧さを質問で潰し、仕様の選択肢を比較し、ステークホルダーに判断材料を提示する。コード量は減ったのに、評価は上がり、転職で年収が上がりました。
KPI:(1)仕様の論点メモを毎週1枚作る(2)リスクと代替案を2案提示する(3)“誰の何がどう良くなるか”を1行で言語化する、を継続してください。コード量ではなく意思決定の貢献が積み上がります。
捨てるべき2:「忙しさ」を成果だと思う働き方
30代で詰みやすいのは、会議・障害・調整で埋まったカレンダーを“頑張っている証拠”と勘違いすることです。経済産業省の議論でも、生成AI時代のDX推進では「問いを立てる」「仮説検証」「評価・選択」など、タスク処理では代替しにくい力が重要と整理されています。[出典:経産省 2024]
エピソード:Cさん(33歳)は障害対応の一次受けを抱え、毎日残業。しかし年収は横ばい。そこで「一次受けをやめる」のではなく、“一次受けを減らす仕組み”に時間を投資しました。アラートの閾値見直し、Runbook整備、SLO設定、オンコールローテ最適化。結果、障害対応工数が減り、改善活動として評価され、より上流の役割に移れました。
KPI:(1)割り込み工数(h/週)(2)再発率(同種障害の月回数)(3)自動化率(手作業→自動の割合)を3カ月追う。忙しい人ほど、年収に直結するのは「忙しさを減らす設計」です。
捨てるべき3:社内だけで通用する“ローカル最適”
同じ会社に長くいるほど、社内ルール・社内用語・社内の評価軸に最適化されます。しかし市場は別物です。AI関連求人の伸長など、外部市場が評価するスキル・経験が変わるほど、社内の称賛と市場価値がズレやすくなります。[出典:Indeed Japan 2025]
エピソード:Dさん(36歳)は社内フレームワークの第一人者でしたが、外の面接で刺さらない。そこで「社内成果を市場言語に翻訳」し直しました。例えば“社内FW改善”ではなく「API応答時間を40%短縮」「月間障害件数を半減」「運用工数を◯時間削減」のように、一般化できる指標で示す。すると面接評価が変わり、年収レンジも上がりました。
KPI:職務経歴書にある社内固有名詞を3つ削除し、代わりに(1)数字(2)再現性のある施策(3)役割範囲(リード/設計/運用)を入れる。さらに月1回、求人票10件を見て「不足スキル」を更新してください。
捨てた後に伸ばすべきスキル投資の優先順位
捨てるだけでは年収は上がりません。空いた時間を“市場が買うスキル”へ投資します。ポイントは「AIを使う」より「AIで仕事の設計を変える」ことです。経産省の整理でも、テクノロジー理解に加えて、業務設計・価値設計に近い能力の重要性が示されています。[出典:経産省 2024]
またMcKinseyのレポートでも、生成AIが生産性や価値創出に影響し得ることが示され、導入の成否は「業務への組み込み方」に左右されると読み取れます。[出典:McKinsey 2024]
優先1:生成AI×業務理解(“使える人”になる)
狙いは「プロンプトが上手い人」ではなく「業務プロセスのボトルネックをAIで潰せる人」です。例えば、要件定義の議事録要約→論点抽出→決定事項のテンプレ化、テスト観点の洗い出し、SQL作成補助、ドキュメントの差分レビューなど、“現場の面倒”を減らすと評価が上がります。
エピソード:Eさん(31歳)は評価が伸びず、半年間で「チームの手戻り削減」に集中。仕様変更のたびにレビュー観点が漏れていたため、生成AIでレビュー用チェックリストを作り、PRテンプレに組み込みました。結果、手戻りが減り、リリース遅延が改善。年収交渉の材料になりました。
KPI:(1)AI活用で削減した工数(h/月)を記録(2)手戻り件数(PR差し戻し回数)を月次で比較(3)テンプレ化した成果物数(議事録、レビュー観点、テスト観点)を累計管理。数字に落とせると転職でも強いです。
優先2:クラウド×セキュリティ(年収レンジが上がりやすい領域)
年収を上げたいなら“責任範囲が広く、失敗コストが高い領域”が近道です。年収データの傾向からも、セキュリティや上流・横断領域が高くなりやすい構造が見えます。[出典:doda 平均年収データ 2024/2025]
エピソード:Fさん(34歳)はアプリ開発中心でしたが、クラウドの権限設計や監査ログ整備に関わったことが評価され、SRE寄りポジションへ。転職時に「設計の意図」「運用の仕組み」「事故を防ぐガードレール」を説明でき、年収レンジの高いオファーにつながりました。
KPI:(1)IaCで再現できる構成を1つ作る(2)脆弱性対応のフローを図にして説明できる(3)SLO/SLAとアラート設計を語れる。この3点を“成果”として職務経歴書に入れると強いです。
優先3:小さなマネジメント(EMでなくても年収は上がる)
いきなり管理職にならなくても、「見積もりの精度」「ステークホルダー調整」「意思決定の質」で年収は上がります。WEFも、変化するスキルに適応するための学習・再訓練の重要性を示しています。[出典:WEF Future of Jobs 2025]
エピソード:Gさん(37歳)はプレイングリードとして、仕様の優先順位づけと見積もりの透明化を実施。納期遅延が減り、プロダクト側の信頼が増え、役割が拡張。結果、評価レンジが上がりました。
KPI:(1)見積もり誤差(実績/見積)を毎月振り返る(2)合意形成の記録(論点→判断→根拠)を残す(3)後輩へのレビュー回数と指摘カテゴリを可視化。マネジメントは肩書きではなく“再現性”です。
年収アップを現実にする転職・交渉・副業の動かし方
最後は「どう動くか」です。市場が上向いている領域で、動く人が勝ちます。年収の“決定”データでも、IT領域の動きが示されており、スキルの組み替えと市場接続が成果になりやすい状況です。[出典:doda 決定年収レポート 2024/2025]
転職:職務経歴書は“市場の採点表”に合わせる
転職で年収を上げる人は、応募数ではなく「刺さる形」に整えています。職務経歴書の基本は、(1)扱ったドメイン(2)技術スタック(3)成果の数字(4)責任範囲(リード/設計/運用)をセットで書くこと。社内評価の文章は市場では弱いので、成果を一般化します。
KPI:(1)書類通過率(通過/応募)を指標化(2)面接通過率(通過/面接)を指標化(3)2週間ごとに職務経歴書を1回改善。通過率が上がらないなら“市場の採点表”にズレています。
年収交渉:材料が9割、言い方は1割
年収交渉は「お願い」ではなく「根拠提示」です。提示材料は3つだけで十分。(1)市場レンジ(求人票・エージェント情報)(2)自分の成果(数字)(3)期待役割(入社後に何を担うか)。この3つが揃うと、交渉は自然に通ります。
KPI:(1)交渉で使える成果指標を10個作る(工数削減、障害削減、速度、品質など)(2)“入社後90日プラン”を箇条書きで作る(3)オファー差額(提示-希望)を記録し、次の交渉に学習を反映する。
副業:スキルの証拠づくりとして使う
副業は「収入増」だけでなく「市場価値の証拠」にもなります。特に30代は、転職の面接で“再現性”を問われます。副業で小さく案件を回し、要件→実装→納品→改善の一連を経験すると、説明が強くなります。
KPI:(1)月の副業稼働時間(h)(2)納品物の数(ポートフォリオ化)(3)継続率(リピート/単発)。稼働を増やしすぎず、証拠を残す設計にしてください。
明日からできる3アクション
- 求人票を30件見て「自分の職務の市場レンジ」と「不足スキルTOP3」をメモする
- 直近3カ月の成果を“数字”に翻訳して10個書く(工数、障害、速度、品質、売上、コストのどれかに寄せる)
- 捨てるべき3つのうち、いま一番刺さるものを1つ選び、KPIを1つだけ今週スタートする(継続を最優先)
変化が速い時代ほど、完璧な計画より「小さく始めて数字で改善」が勝ちます。スキル変化は前提であり、学び続ける人が報われやすい環境です。[出典:WEF Future of Jobs 2025]
まとめ
30代エンジニアが年収を上げる鍵は、「努力を増やす」ではなく「捨てて、集中する」ことです。コーディング量=評価という思い込み、忙しさの自己満足、社内ローカル最適を捨てる。そのうえで、生成AI×業務理解、クラウド×セキュリティ、小さなマネジメントへ投資し、転職・交渉・副業を“数字のゲーム”として回せば、年収は現実的に動きます。

